きっかけは中村勘三郎
この本を手に取ったきっかけは18世中村勘三郎さん。
2021年2月から歌舞伎を見始めた時点で既に故人となっていたこの方のことをもっと知りたいと思ったから。
生前TVでその姿を見たことはあり、有名な歌舞伎俳優だとは芸能関係に疎い私でも知っていたけれど、想像以上だった。
舞台に出るだけで観客の目を引き付け、釘付けにするすごい役者さんだった。
私はシネマ歌舞伎で中村勘三郎さんの舞台を見たけれど、もう生の舞台を見られないことが残念で仕方なく、もっと早く歌舞伎を見たかったと後悔すら覚えた。
そんな中村勘三郎さんがポルトガル旅行した際に、現地で暮らす日本人としてヤマザキマリさんが紹介されたらしく、その時の様子やその後のやり取りがエッセイになっていた。
ページ数としては多いわけではないけれど、そこに記された中村勘三郎さんはあの全身で語る姿やあの声と喋り調子まで聞こえてきそうな雄弁な文章だった。
また、歌舞伎俳優としてのメディアの発信では表現しきれない果てのない探求心の一端も見えて、改めて枠に収まらない人物だったのを教えてもらった。
その一点だけでも本書を読んだ甲斐があるというものだが、それ以上にヤマザキマリさんという人の一面を教えてくれる本だった。
男なんてね
地球上もっとも無邪気で無責任な生き物
ヤマザキマリ著 男子観察録
表紙をめくってまず飛び込んで来た文章にこの本で記述される男性たちの特徴が表れている。
実際は責任感も十分な人物も含まれているのだけれど、筆者であるヤマザキマリさんが人として(一部人でもないものも含まれているけれど)どういった男性に魅力を感じているのかが分かる。
今の日本で自分や娘の結婚相手として見るなら不安にすらなってしまう、堅実さとは対極を為す男性たちの話が並ぶ。
ヤマザキマリさんと言えば漫画『テルマエロマエ』の作者であり、同漫画の実写映画化もあってヒットしてからはTVでも度々見かける。
私は特にラジオ番組『安住紳一郎の日曜天国』のゲストコーナーでの溢れ出る勢いと留まるところのないトークの印象が強いのだけれど、本書はそういった軽快さよりも文体としては硬質な印象が残った。
もちろん、あの溢れ出る勢いは文章からも感じるのだけれど、全体を通して無駄を削ぎ落して必要なエッセンスのみを抽出したような文章だった。
そして、ヤマザキマリさんがこれまでに貪欲に蓄積した知識と教養がそこかしこに散りばめられていて、私は当たり前に語られるあれこれをこんなにも知らないのかと思い知らされると共にきっかけを与えられたことを嬉しく読んだ。
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